“907号室”に戻ってきた。
メールの通りはーちゃんは温泉に行ってしまったようで部屋は空っぽだった。
どしゃ降りの雨に濡れたせいで、頭のてっぺんから爪先までびっしょりだ。
「千秋、あり……」
部屋の入り口でお礼を言おうとしたとたん、千秋は片腕だけであたしを抱きしめた。
そして背中でドアを閉めた。
「なんで泣いてたんだよ?アイツと一緒じゃなかったのか?」
千秋の胸に顔を埋める。
ぐっしょり濡れた千秋のTシャツは肌に吸い付ていて冷たかった。
千秋の心臓の音がやけに大きく耳に届いた。
「泣いてないもん……」
「強がんなよ。オレに嘘つけると思ってんの?」
「フッ」と笑う千秋はやっぱりいつもの千秋で、でもそれが何故かわからないけど安心したんだ。


