「シイ――!」 ジャリジャリと林道を蹴る音と重なって背中に響いた声に振り返る。 「は……羽鳥?」 そう呟いたけど、羽鳥は千秋を睨み付けると一瞬で目を逸らした。 「待って」……そう声をかけたかったけれど、傷つけておいて今さらなにを言えばいいかわからなかったんだ。 戸惑っている間に、羽鳥は一瞬で消えてしまった。 千秋は何事もなかったかのようにあたしの手を握りしめる。 雨の中で、その温もりだけが優しく感じた。 「ほら、行くぞ」 「……えっ?」 「ホテル帰って着替えんだよ」