羽鳥の足音が消えた。
とたんに、あたしはその場に崩れ落ちるようにしゃがみこんだ。
「サイテーだよ……あたし」
鼻の奥がツーンと熱くなって、ポロポロと温かいモノが頬を伝う。
あたしは雨音に隠れて泣いた。
『言いたくないことの一つや二つ、誰にだってあんだろ……』
羽鳥の言葉に、あたしは夢から覚めたような気分だった。
千秋との時間は、知らず知らずのうちにあたしの心にある重荷を忘れさせてくれていた。
けれど、
“過去”が一気に頭を過った。
それは、本当に思い出したくもナイことで。
嗚咽して泣いても、どしゃ降りの雨がそれを消してくれた。


