雨はあたし達を濡らしていく。
薄気味悪い暗闇の中で光る懐中電灯の灯りで、お互いの表情が少しだけわかる。
「……アイツが好きなわけ?」
そんなこと言われても、今こうして立っているのが精一杯。
あたしは沈黙する。
お姉ちゃんが言っていた、あたしが羽鳥に対する気持ちが“友達以上恋人未満”っていうのは間違いだ。
友達は友達で、それ以上でもそれ以下でもナイ。
ましてや、恋愛感情なんてナイ。
だけど……羽鳥は大切だから。
「答えらんねぇってことは、好きだって言ってるようなもんじゃねぇか」
「あたしは……」
「嫌いとか言って、普通にヤってんじゃねぇよ」
羽鳥の乱暴な口調とその声は降りしきる雨の中でもよく響いていた。
「……なによ」
「ああ?聞こえねぇよ」
胸の奥に言葉では言い表せない感情の渦が湧きだして、拳に力をこめた。


