やっといつも通り口をきいてくれたと思ったら、一番気まずい質問をされた。
……口ごもってしまう。
真夏の夜の雨は、あたしの心を余計に揺さぶった。
「アイツが嫌いなんじゃなかったっけ?」
「それは……」
「ウブなフリして、やってくれんじゃん?」
その言葉とともに、あたしの指から羽鳥のTシャツがスルリと抜けた。
ふいに振り返った羽鳥の瞳は、あたしの動きを静止させてしまうほど冷ややかなモノで。
羽鳥の罵声は止まらなかった。
「“王子様”にきわどく迫られて、尻尾振って喜んでんじゃねぇよ」
「……」
「純情ぶってんなよ?」
重苦しい雰囲気に、胸がちぎれそうだった……。


