俺様王子と秘密の時間



あたしは怖くなって無意識のうちに羽鳥の側に寄っていた。



「バカ……雨だって」

「へ……?」

「ひっつくなっつぅの」


あ……。

その言葉で、あたしは羽鳥のTシャツの裾をキュッと掴んでいたことに気づく。



「ご……ごめん」


あたし、なにやってんの?

あんなとこ見られて無神経にもほどがあるよ。

羽鳥のTシャツから手を離そうとした。



「怖いならくっついててもいいけど、その変わりキャーキャーわめくなよ」

「え……?」


いいの……?

躊躇ったけど怖さには勝てなくて、あたしは遠慮がちにちょこんと裾を掴んだ。


その直後、懐中電灯に照らされて、すぐ隣の林道を千秋と女の子が通りすぎていくのが見えた。

羽鳥は、はぁあー……とわざとらしいくらいのため息をついて



「お前、なにアイツに流されてんだよ?」


パラパラと降ってくる雨の中で、あたしに背を向けて言い放った。