「………」
真っ暗闇の中で羽鳥の持つ一本の懐中電灯だけが光っていた。
薄気味悪い……。
カサカサと葉っぱが揺れる音にさえあたしはガタガタ震えっぱなし。
「……コウちゃんとはーちゃん大丈夫かな?」
「………」
「あ……夏合宿終わったらすぐ期末だよ?羽鳥ちゃんと勉強した?」
「………」
羽鳥はやっぱりなにも喋ってくれないから、あたしの独り言みたいだった。
その意味はわかっていた。
千秋のこと、嫌いだなんて言っておいてあたしはズルズル千秋のペースに呑まれて……。
少しずつ少しずつだけど、惹かれていることに否定出来ない。
沈黙よりも、ずっと友達だった羽鳥が口をきいてくれないことが辛かった。
ポツリ……と鼻に冷たい感触がした。
「きゃあ……!」
林道を半分来たとこで突然、雨が降りだした。


