俺様王子と秘密の時間



ど……どうして?

嘘でしょ……?

その場に居た人物を視界に捉えたあたしは言葉を失った。



「キミ、確か……2年の川村さん?」


あたしの名前を呼ぶその声のトーンは、イケないことをしていた時に発した声よりも……ずっと優しいモノだった。

それに、この声の主をあたしは知っていたから。

だからあたしは自分の目を疑ったんだ。



だって……そこに居たのは、あたしが密かに想いを寄せる南センパイだったんだから……。

あたしは驚きのあまり、何も答えられない。



「圭一、知ってるの?」

「ああ……、なんとなくだけど」


なんとなく、なんだ……。

そりゃそうだよね。

あたしが勝手に好きなだけで、挨拶しかしたことないし……。

それもたった2回で……先輩があたしを知るわけないよね。