「でもさ……やっぱり、光一のお母さんは、母親は爽姉しかいないんだよ」


向井家の空気が、張り詰めている。



ダイニングテーブルに置いた腕が、冷たくなる。


「ありがとう。今まで、誰にも言えなかったの。聞いて貰って、そのうえきちんと正してくれた」

涙の後を手のひらで擦りながら、爽佳は静かにそう告げた。



「お姉……」


いつの間にか、紘伽の頬にも涙が伝っていた。