【短】雨宿り

「好きな女に信用されない男の気持ちも考えたら?虚しいよ?」

「好きな女じゃないもん」

「は?」

「多分軽い気持ちだったんだよ。私が買い物に行って『あ、これ可愛い欲しい』って衝動買いするのと同じ感覚で。

きっと目新しいものにちょっと手を出してみたくなっただけでしょ」

「衝動買い!?」

「好きだなんて言われたことないし、いつもどこか冷めてるし」

「……じゃあフッたんじゃないじゃん。最初からフラれてたってことだろ」

「……」

睨み付けるように見る髭男の視線から逃れるように、私は俯いた。

一番痛いとこを突かれて、言い返すことも出来なくなる。

そんな私にため息をふりかけると、髭男は「あのねー」と、めんどくさそうに話し始めた。

「好きかそうじゃないかって、あんたは何で判断するわけ?言葉?プレゼント?キスの回数?」

……言葉……?かな。

「はい、ブブーッ。今、俺の選択肢から選ぼうとしただろ」

「え?だって」

「だってもクソもあるか。そんなんで愛情はかれるかって」

「じゃあ何で判断しろって言うの?」

「信じろよ。ちゃんと見てればわかるから」

シンジロヨ……。

「少なくとも俺は、彼女を信じてるし、毎日ちゃんと見てる。

出された料理も、増えた絆創膏見ればどれだけ頑張ってくれたのかわかるし、ソファーで寝ちゃっても目覚めた時に布団被ってたり、なくなったはずの俺の好きなアイスも、気づくとまたストックされてたり、そういう何気ない出来事を見つける度、愛情感じるんだ。

そういうもんじゃない?」

「……わかんない」