【短】雨宿り

私の寂しさも全く気づいてなかった。

私の気持ちに少しも耳を傾けてくれてなかった。

私の誕生日も忘れて朝からスェットのままボサボサ頭で歯も磨かずにテレビをボーっと見て。

なのに仕事が入った途端、機敏に動きだそうとする彼。

『両方』なんかじゃないじゃん。

やっぱり碧斗にとって大事なのは仕事、仕事、仕事。

『私は家政婦じゃない!!』

テーブルに並んだ朝食をガーッと床に落として
、その辺に散らばっているものをガンガン彼にぶつけた。

彼の使った耳かきや、タオルや、ひげ剃りや、鞄が彼のお腹や肩に命中して。

最後に外した指輪を、思いきり碧斗めがけて投げつけ出てきたんだ。








「私は、ただ、そばにいてほしかった」





私は目の前の彼に向かって、呟いた。