【短】雨宿り

私が言わなければ、結婚記念日も誕生日も簡単に忘れてしまう。

土曜、日曜お構いなしに仕事が入って。

一緒にいても鳴り止まない携帯。

仕事、仕事、仕事。

私は、いっぱいお金があって安定した生活の中で、プレゼントに宝石が欲しいなんて思わないのに。

少しの給料でも、二人で肩を寄せ合って、同じものを見て。

ただ一緒に歩きたかっただけなのに。

それはわがまま?

それは高望み?

夢見る少女?

理想像?




誕生日を忘れて、鳴った携帯に二つ返事で

『仕事入ったわ。行ってくる』

そう言う碧斗に、私はもう、我慢の限界で。

『バカ!』

気づいたら口にしてたんだ。

そんな私の気持ちも知らずに

『は?』

鳩が豆鉄砲くらった顔って、こんなんですよと言わんばかりにアホ面向けて出てきたのが

『どうしたの?』