そして
「本気?」
なんて聞く。
「は?」
「払えるの?」
「バカにしないで」
女だからって、フリーターだからって、舐めないで欲しい。
珈琲代くらいあるし!
ムッとして鞄の中に手を突っ込み、財布を探った。
でも、なぜかあるべきはずの財布が見当たらない。
「あれ?」
その代わり指先に触れたのは、財布より一回り小さな何か。
心当たりないそれに思考が止まっていた時、立ち上がった髭男が言う。
「彼女、自分の財布と間違えて俺のキーケース持って出掛けちゃったんだよね。
まいったよ。スペアー探しても見つかんないし、家の鍵もかけられないし。
目の前にある愛車にも乗れないんだから」
そして、レジに向かって歩き出した。
「……」
鞄の中で触れたそれを、ゆっくり取り出して目の前にかざす。
中から少しだけ顔を出して揺れているのは、手作りのビーズストラップ。
なんだ、そういうこと。
──『例えば、もらった大事なものは使ってないんじゃなくてあまり人目につかないとこにつけてるだけなんだ、とか』──
財布と同じ手触り、同じ模様だけど一回り小さいそれは、私がクリスマスに彼に贈ったキーケース。
「本気?」
なんて聞く。
「は?」
「払えるの?」
「バカにしないで」
女だからって、フリーターだからって、舐めないで欲しい。
珈琲代くらいあるし!
ムッとして鞄の中に手を突っ込み、財布を探った。
でも、なぜかあるべきはずの財布が見当たらない。
「あれ?」
その代わり指先に触れたのは、財布より一回り小さな何か。
心当たりないそれに思考が止まっていた時、立ち上がった髭男が言う。
「彼女、自分の財布と間違えて俺のキーケース持って出掛けちゃったんだよね。
まいったよ。スペアー探しても見つかんないし、家の鍵もかけられないし。
目の前にある愛車にも乗れないんだから」
そして、レジに向かって歩き出した。
「……」
鞄の中で触れたそれを、ゆっくり取り出して目の前にかざす。
中から少しだけ顔を出して揺れているのは、手作りのビーズストラップ。
なんだ、そういうこと。
──『例えば、もらった大事なものは使ってないんじゃなくてあまり人目につかないとこにつけてるだけなんだ、とか』──
財布と同じ手触り、同じ模様だけど一回り小さいそれは、私がクリスマスに彼に贈ったキーケース。

