【短】雨宿り

「勝手なのはあなたの方でしょ?彼女の知らないとこで勝手に一人で全部背負って。彼女はどうか知らないけど、私なら絶対怒る」

「しょうがないだろ。そういう性格なんだから。なんつーか、あからさまに優しくしたりとか無理だし、色々説明すんのもめんどくさいからさ。

まぁ、俺の彼女なら全部理解してくれてるはずだけど」

「自惚れるのもいい加減にして。実は全然伝わってなくて、今ごろ彼女、私みたいに置き手紙して出て行ってるかもよ?そしたらどうするの?」

「追いかける」

「追いかけても無理だったら?」

「仕方ないから全部説明するかな。あんたに今こうして話してるみたいに?」

「……」

「例えば、同棲する前の『送るの面倒だから住んじゃえば?』って言葉も、ただの照れ隠しだよ、とか」

「照れ隠し?」

「例えば、もらった大事なものは使ってないんじゃなくてあまり人目につかないとこにつけてるだけなんだ、とか」

「え?何?」

何を言ってるのか理解できずキョトンとする私に、髭はわざらしく大きなため息を吹きかけた。

「……あれだな。俺はあんたの男に同情するわ」

「同情?」

「その男の気持ちも言葉も、鈍感そうなあんたはことごとく裏切ってそうだから。男の諸事情もわかんなそうだし」

「諸事情?」

さっきからクエスチョンマークだらけの私の目を見ると、髭男は「いいか?」なんて諭すように話し始めた。