【短】雨宿り

「俺はどうすれば良かったのかな」

「どうすることも出来ないよ。そんな女同士のいさかいにあなたが入れば余計ややこしくなるもん。

そういうのは、放っておくしかないんです。そしたらきっと自然と治まるものだから」

「自然と治まる?かな……」

「多分。でも案外彼女を諦めた途端、イジメを指示したその友達のことあなたが好きになっちゃったりして?そしたら全て丸く治まるでしょうね」

「好きじゃなくても、付き合えば丸く治まるんじゃない?」

「──どういうこと?」

表情を曇らせる私に、髭はやけに真面目な顔を向ける。

なんとなく気まずくて目をそらし、カップに指をかけた。

それを口に運ぶ途中、髭がまた話す。

彼女には言ってないんだけどさって前置きをして。

「『抱いてくれたら、彼女への嫌がらせやめてあげる』って言うその女の言葉受けて、抱いたんだ」

カチャッと陶器のぶつかり合う音と共に、手元の珈琲が溢れ落ちた。

「俺もまだ青いガキだったからさ、そんなことでしか彼女を守る方法見つけられなくて」

ウエイトレスが駆け付けて何かを言うけど、なぜだか私の耳には全く入って来ない。

気づいた時には溢したはずの珈琲はキレイに拭かれていて。

私のスカートに茶色いシミを残していた。

「1度だけのつもりだった。それで守れてるつもりだったんだ。現に彼女の周りは平和に戻り始めたから。

けど、そんなんであの女が納得するわけなくて。よく考えればそんなの簡単にわかったことなんだけど。

本気で好きな女のことになると、さすがの俺でも判断力鈍るんだよ」

「……」