【短】雨宿り

「無理矢理なんて、デリカシー無さすぎ」

「仕方ないだろ、したかったんだから」

「したいからって……もっと他に方法なかったの?」

「わかんない。物心ついてから女に困ったことない俺が、初めて俺を困らせる女に出会っちゃったんだからさ、わかるわけないじゃん?」

「それ、自慢?」

「うん。軽く」

俺モテるから、って、またキメ顔しようとする髭男。

それを阻止する為に無防備にテーブルに置かれた男の手をペチンと叩こうとして。

バコンッ。

あっさり手を引っ込めた男のせいで、私はテーブルを思いきり叩くハメになった。

自爆だ。

「痛っ」

「俺の反射神経ナメんなよ」

悔しいから髭男の脛を蹴ろうとするけど、バランス崩して、一人でずっこけた。

「あんたの運動オンチも相当だけどね」

「ち、違います!今はちょっと疲れたから横になろうかなーとか思っただけで」

「喫茶店で?寝るの?せめて俺の話終わってからにしてくれる?」

「……仕方ないですね。じゃあ」

「アホか」小さく呟く髭男の声は聞かなかったことにしよう。

「で?彼女にベタ惚れになっちゃったあなたがその後とった行動は?」

「……諦めた」

「あっさりだね?そんなもんだったんだ。所詮」

「彼女、その友達を含めた周りの全員から無視され始めたんだ。俺のせいで」

「へぇ。それで諦めたんだ?守ってあげるとか、そういうカッコいいことは出来なかったんだ?」

あれ?

やられっぱなしにイラついて、つい挑発するようなこと口にしちゃったけど。

そこに全然乗っかってこない髭に、軽く拍子抜け。

それどころか、若干落ち込んでる風?