【短】雨宿り

「放課後、偶然二人きりになった教室で俺は初めて彼女の髪を触って。それで言ったんだ。『付き合ってみる?』って。

けど、彼女の答えはNOで。

さらに翌朝ベリーショートになった彼女が登校してきた。俺の大好きだった髪が一夜にして消えちゃったんだ。

あれは驚いた。本当に。

彼女の友達で俺のことを好きな女がいて、その子が俺の告白を見てたんだよね。

つーか、見てるの知ってて俺は告白したんだけどさ。でも彼女は、その子に『私は好きじゃないから』って必死で説明してて。

結局友情を守る為に、そうやって恋を諦める方法を取ったらしいんだけど。

何もそこまで切らなくても良くない?」

「そこまでしないと、踏ん切りつかなかったんじゃないですか」

「友達の為にそこまでする必要ある?自分さえ良ければいいとか思わない?普通 」

「さぁ」

「けど、その男気に、俺はさらに惚れたな」

「男気って!女の子でしょ?」

「あー、けど、その潔さなんかカッコ良くない?」

「カッコ良くなりたくて切ったわけじゃないと思うけど」

「うん。でも、カッコ良かった」

そう言って、髭男はまた愛しそうに窓の外に視線を向けた。

雨の何がいいんだろう。

お気に入りの服も靴も濡れるし、傘は邪魔なだけなのに。

寒くて冷たくて、寂しくなるだけなのに。

「それで、その彼女さ、俺に伝えに来るんだよ。その友達のいいとことか、友達の気持ちとか。で、付き合えってさ。バッカじゃねーの?って思った。

だから、俺はそんなこと言う彼女捕まえて無理矢理キスしたんだ。泣かれたけどね。

おまけにバカ強いビンタまでもらって、傷ついた」