【短】雨宿り

「だから、信じろよ」

「無理……。そうとしか思えない」

「思い込み激しすぎるから」

「だって、最近、私には全然触れないし」

「早い話が、欲求不満なわけ」

「違う!」

「抱いてもらえなくて寂しいんだろ?」

「寂しいけど、抱いて欲しいわけじゃないもん。抱き締めて欲しかったの。ちゃんと愛されてるって安心が欲しかったの」

「朝3時に起こされて抱き締められて嬉しい?」

「起きて待ってた」

「……は?」

「ベッドで横になって目瞑ってたけど、いつも起きてたの」

「そりゃ、寝てると思うだろ」

「でもよくドラマとかであるでしょ?『遅くなってごめん』とか言いながら妻の寝顔にキスするの。

そうされたら目を開けようと思ってて」

「夢見すぎ」

「女の子だもん」

「アホか。それがないからで浮気疑われたらやってらんないな」

「それだけじゃないもん」

「他になに?」

「昔からモテる人だったから……」

「ふーん」

多分、目の前のこの髭男には、私の乙女心なんてサッパリなんだろう。

口にしなくても『ばかじゃねーの?』ってその顔が言ってる。

そして、外を見つめてた。

いくらでも聞くけど?なんて優しく言ったから話したのに。

話し損?

髭男の目線をたどって、私も窓の外を見つめた。

さっきより雨脚は弱まり、シトシト降り注ぐだけの粒になってる。

「雨で良かったよ」

髭は大きくため息をつくと、そう言った。

「なんで?」