「あたしはっ――」 「聞けよっ!望夢!」 今度は彼の大声が、あたしのそれを遮った。 それと同時に、 勢いよく木の幹に押しつけられる。 「―――いっ・・て」 背中に走った痛みに、あたしは小さく声を漏らした。 至近距離にある先輩の顔。 涙を流したままのあたしは、その場から逃げ出したくて、 押さえつけられている手を振り払おうと試みる。 けれど彼の力が強すぎて、その手を動かすことすら出来ない。 「俺の話も聞けって」 どこか切なげな彼の声に 胸がキュッと締め付けられるようだった。