「あ、あのっ!先輩・・・!?」 やっとの思いで口を開くと、あたしの声に気付いた彼は足を止めた。 体育館の横にある、大きな桜の木の前。 「あ、ごめん。ビックリしたよね?」 そう言って掴んでいたあたしの腕を放すと、困ったように笑う。 「僕、3年の五十嵐って言うんだ。五十嵐慧」 彼はそう言うと「知ってるかな」と言って小首を傾げた。 ・・・・・知らないはずがない。 今、こうして目の前にいるのは ずっと憧れて 秘かに思いを寄せてきた相手なんだから。