――6月


梅雨入りしたばかりのこの時期。

昨日も降った雨で、まだ少しぬかるんだグランド。



足元のサッカーボールに気を遣いながら
迫ってくるディフェンダーの間をすり抜ける。


右から上がってきたチームメイトにパスを出すと見せかけて
4人目のディフェンダーをかわすと、
そのままゴールへとボールを叩き込んだ。



「キャー!!ノゾムー!!!」


「カッコイイー!!」



耳をつんざくような声で名前を呼ばれて、そっちを見る。

視線をそのままにして汗にぬれた髪をかき上げると
またうるさく名前を叫ばれた。



「ノゾムー!!」


「王子ー!こっち向いてー!!」



ただの練習試合だっていうのにこのテンション。

ゲームの最中にまでキャーキャー騒がれると気が散ってしょうがない。