「…あんまり大事にし過ぎてると、他の【ダレカさん】に盗られちゃうかもよ?」


「………【ダレカさん】って誰」


「あれ~緑野聞いてたの?誰にも聞こえてないつもりだったのに☆」


「………他の奴等には聞こえてない…魔王、にも」


赤松は緑野が視線で示した先を見る。


確かに他の4人には聞こえていないようだった。…主に黄金井と青柳のギャーギャー騒ぐ声によって。



「…クスッさぁ?誰だろうね~?

でもさ~あんまりうかうかしてると~…ねぇ?



…俺さ、和花のこと【気二入ッチャッタ】」





 赤い悪魔は、妖艶に微笑む





緑野はそのおぞましいほど美しい姿に、ゾッとした。


…この男はいつもこうだ。

その仮面の奥に潜んでいるものなど微塵も感じさせず、只、静かに微笑む。


「………お前のそういうとこ、嫌いだ」


「え~ショック!俺はただ面白いことが大好きなだけなのに☆」



…赤松は、空を見上げた。


蒼く、蒼く、何処までも…


馬鹿みたいに澄んだ空を。



「嗚呼、夏だねぇ」