『大阪上本町行き、発車します』


電車が動き出す。

和也と一樹の姿が、どんどん遠ざかって見えなくなった。

窓の外を駆け抜けていく、見慣れた故郷の風景を目に焼き付ける。

もう二度と見る事はない。

もう二度と、ここへは帰ってこないのだから。


「博愛、ちょっと寝なさい」


今にもお菓子の袋を開けようとしている娘の手を優しく止めて、頭を撫でた。


「今日から二人だよ。もう、誰も頼ってられん。」


複雑な表情を浮かべる母の姿を、博愛はじっと見つめていた。