「名嘉間さん。私、あなたなんか嫌いです。失礼いたします。美優、トイレ行ってくるね」


あたふたしてる美優をほったらかし、にっこり笑って、立ち去ってやる


今まで有効的な方法やったし


空気は凍ってしまうけど、仕方無いやん


逃げるが勝ち


そう思ってたのに…


「おい、柚月、逃げるのかよ。このやり方俺には通用しないけど?自信がないから逃げるんだろ?いつも、自分を卑下して、相手を立てたつもりで、自己満足してるんだろ?」


自信なんてないわ!


そもそも何の自信よ!


逃げたい


今すぐ…


俺、お前のことわかってんねんで、って言われるの一番苦手


自分のことぐらいわかっている


だから嫌やねん


「う、うちの事なんてどうでもええやん!あんたに関係ないやろ!うちの人生やん」


私は逆ギレしてしまった


しかも、初対面の人間に…


「これでこそ、佐倉柚月。やっぱ、俺が見込んだ女なだけある。惚れさせたい! なぁ、みゅう、俺見る目あるだろ~」


美優は唇を噛みしめ、名嘉間大樹を睨みつけ、言い放った


「別に大樹の見る目あるわけじゃないじゃん。私が言ったんじゃん。柚月のこと」



やっぱ、美優の声や話し方が違う


いつもの声からワントーン低い



て言うか、見る目ある無いどうでも良いねん



図星指されるとシンドイねん


「うちはうち。人になんでで決められなあかんのよ。しかも、初対面の人間に…。うちの人生やん。ほっといて」


ボソッと呟く様に言った言葉


その言葉に反応したのが美優だった


「放っておいたら、柚月、自分一人で抱えて、何でもかんでも決めてくじゃん。もう疲れた。『みゅう』辞めてやる」


美優、今まで『みゅう』演じてたん?


ぽかーんとしていると美優が追い討ちをかける


「柚月、私に振り回されて大変だったでしょ?茉都花から聞いてたからね、柚月の性格。遊んじゃいました」


あっけらかんとして言う美優


私を助けてくれていたのは確かやから感謝しつつも…


「騙してたんやなぁ!美優!一回しめたる!」


そんなやり取りを茉都花が微笑ましく見ていた


私たちの口喧嘩を聞きながら、クスクス笑いが漏れ始め、穏やかな空気に変わっていった