影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-

すかさず初代の動きの先を読む。

「背後!」

振り向くものの。

「遅い」

初代の蹴りが鳩尾に叩き込まれる!

俺は為す術もなく吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

「甲斐様!」

駆け寄る百合。

「く…」

腹を押さえて、俺は上体を起こした。

初代は枝から降り、俺の目の前に立つ。

ただ直立しているだけ。

なのに一分の隙もない。

「…おのれぇっ!」

素早く立ち上がり、再び仕掛ける。

今度は念入りに多重の分身を見せる。

初代からは俺が四人五人と見えるであろう、緩急をつけた動き。

だが。

「ここだ」

たやすく蹴りで足元を払われる!

俺は無様に転倒、這い蹲る羽目になった。