影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-

頭巾から覗く目が細まる。

俺に続き、百合も何とか立ち上がった。

だがその表情には迷いがある。

『抜忍成敗』は伊賀の掟。

しかし相手は俺の父親。

そこにまだ、彼女は躊躇いがあるのだろう。

俺とて、伊賀の里に信長が攻め込んでくるまではそうだった。

初代が抜忍などする筈がない、我らを裏切る筈がないと信じていた。

が、現実は残酷だった。

伊賀の里は滅び、頭領は討ち死に、生き残った仲間達も散り散りになった。

それもこれも…。

「初代ぃっ!」

俺は忍者刀片手に初代に襲い掛かる!

正面から斬りかかる!…と見せかけ、分身による残像で翻弄し、虚を突いて背後を取る!

だが。

「何だ、そのお粗末な分身は」

背後を取った筈の初代の身が、陽炎の如く消える。

分身を、分身で返された!