影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-

頭上からの声。

俺と百合は咄嗟にそれぞれの得物を構える。

…頭上の太い枝。

そこに、忍装束に頭巾姿の男が、逆さにぶら下がって腕組みしていた。

頭巾から覗く目元には、年齢から来る皺が見受けられる。

そしてその身から醸し出される気配、雰囲気。

相当な手練れである事は間違いなかった。

間違いなく上忍の位に位置する隠密。

何より、頭巾で顔を隠していようとわかる。

俺はこの隠密を知っていた。

「…父上…!」