影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-

朝靄に山中が煙る頃、私は僅かばかりの眠りから覚めて行動を開始した。

行動、といっても特にアテがある訳ではない。

隠密としての習性みたいなものだ。

ひとところに留まり続けては、居場所を悟られる可能性がある。

だから長くは留まらずに転々と場所を変えるだけ。

獣道ですらない茂みの中を、苦無で掻き分け掻き分け進む。

今度はどうしようか。

また暗殺の依頼を受けるのもいい。

だが金に困っている訳でもないので、その時の気分次第だ。

伊賀の里にいる時は、任務と受け止めていたから暗殺もできたが、正直人殺しは好きではない。

仕事は選びたい気分だった。

それはそうと…。