私はボーカルの子の色んな事情も知っていた。でも、バンドの練習に遅れたことはなかった。なによりあいつがマイクを持つと、息をふきかえすんだ。そのときの目を知っているから。
「先生とはわけがちがいます。友達の力、甘く見ないでください。」
ボーカルのやつは泣いて謝った。だけど次の日も、学校に、来なかった。職員室にいく。先生はあざ笑っているように見えた。
「・・・ゴミ袋ください」
悔しかった。こんな学校の権力使いやがって。大勢で責めやがって。でもなにより、涙がとまらなかった自分に、怒りがこみあげた。どこかで絶対友達を疑っているんだと。来ないんじゃないのか出られない出られないでられない・・・。いや、自分が信じなきゃどうする。真っ暗になるまで奉仕活動をした。部活や、バンド練習でメンバーも疲れているだろう。でも、黙々とやってくれた。誰一人さぼらなかった。ごみぶくろいっぱいにひろい続けた。
 
晴れてライブ出場が決まった時の感動を忘れない。すごい人の量だった。名前書いたうちわとかめいめいに振っている。飛ぶ。足元に敷き詰められている皆。喝采。一曲目、もう何をしたかなんて覚えていない。
「皆、楽しんでってねーーー!!」マイク握る快感。
ステージに立つことが叶ったことを皆が祝福してくれている。皆も、先生までも泣いていた。演奏しながらメンバーをみわたした。ボーカルのやつの声が体育館中響いて、誰よりも下手なこのエレキは世界に届いていると思った。余談だが、ボーカルはその後も学校を休まなくなって、危ぶまれていた卒業もできた。

行事では、いろんなことがある。行事の、あの追い詰められ感、最っ高。たった一回限りにこめる緊張感。ハプニングもあれば、すげぇ力が出ることもある。仲間を信じない限り、出来ない。あの感覚は、生きていることを思い出させてくれるんだ。そうそれは、とうの昔に一度忘れかけたもので。