「Y=好奇心旺盛で、行動力ある」もしくは、ただの無鉄砲、いい意味であれ悪い意味であれ、ひとは私をそうあらわす。昔を知っている人は首をかしげるだろう。消えたい消えたい。そうして存在も息も押し殺してきたんだから。

「お忙しいところすみません、Yです。今日帰りが遅くなります。5時を30分くらいすぎるかもしれません。」これは小学校の頃の私の電話。門限五時。土日、友達と遊びに行ってはいけない。お小遣いなし。服は父が気に入ったもの以外着てはだめ。悪い子と親がみなした子どもとは、友達になってはいけない。アニメもゲームもだめ・・・少しでも破れば、きまって大変なおしかりをうける。

姉が生まれて13年後、私は生まれた。好奇心旺盛な底抜けに明るい女の子だった。 言葉がわかるようになってきて、状況は一変した。しつけのスタートだった。
「お父さんは友達じゃない。お前は、目上の人に対して、なんていう言葉を使っているんだ。」
完璧な敬語を覚えた。もう、あれは尊攘敬語。父は激怒すると、私だけではなく、母をあとで二階に呼び出す。「お前のしつけが悪いからだ」と怒鳴るのだ。色んなものが飛んでいる日もあった。その壮絶さに、本当にいつか殺される、と思っていた。私が悪い子だからいけないんだ。一階に残った私はがたがた震えながら、仏壇に向かって何度も謝るしかなかった。心から父を、憎んでいた。