「元気か? 響生」


すっかり身長の追い付いた姿に、出来るだけ自然な笑顔で声を掛けてみるが、


「おまえこんなとこで何やってんだよっ!」


五年ぶりに再会した弟は、それを許そうとはしてくれなかった。


「……今まで、何やってたんだよ」


また目が合うなり弱まった語気で呟き、響生は五年ぶりに兄をレンズ越しに見つめた。



響生の記憶の中に居る澪路は、大学生あがりのド金髪だった。
それが五年見ない間に、すっかり落ち着いた黒髪の好青年になっている。



そして皮肉にもその姿は紛れもなく、


「五年前から世話になってる。この家で」


絆が大事な人と言った人物そのものだった。


「響生たちだったんだな。絆が言ってたの」



懐かしそうな眼差しで三人を見つめる澪路の目に、まだ中学生になりたてだった頃の姿が重なる。



ずっと父親に反発して自由奔放にしていた自分を、羨ましげな眼差しでいつも追いかけていた響生。



父が用意した私立の小学校でなく、近所の小学校に響生が通ったのは、澪路の影響だった。