架や咲奈の仲介に、玲於の激励。
それを以てしてもまだ、一歩を踏み出せずに居るのは文化祭前の慌ただしさのせいか。
あれやこれやと回されてくる雑用に生徒会の人間は、否が応でも走り回ざるを得ない。
それを上手く転がすのが生徒会長の役目。
「響生だけズルい!」
「名ばかりの会長なんだから人一倍動けよー」
と、役員とは言え走り回り役の幼なじみたちを容赦なく追い出し、
普段は私的に使いまくりの生徒会室で、名ばかりの生徒会長は当日のスケジュール表をボールペン片手に眺めていた。
各クラスの出店状況や舞台のタイムスケジュール。
羅列する文字の中に見つけた『眠り姫』に、メガネの奥の瞳は動きを止めた。
かつて演じた王子と姫を、再会した二人が再び演じる。
これを全面的な売りにした劇は、ちょっとした話題になっていた。
渋い表情を浮かべ、ため息を零した響生が視線をスケジュール表から天井へと向ける。