「そんなとこに突っ立ってないで寄ってけば?」
架の表情はさっきから変わらない。
寸分違わぬ胡散臭い爽やか笑顔で、絆を廊下の奥へと促した。
「…………」
無言のまま拒むように架から視線を外し、絆は体を半回転させて生徒会室に背中を向けた。
絆の反応は架の予想通りだったのか。
斜め後ろから表情を窺っていた架は、
「まぁ、響生に関わるなって言われた手前……行けるワケないよね」
はっとしたように自分を振り返る絆を、やっぱり変わらない表情で見ていた。
「俺としても、響生にはもう、関わって欲しくないしさ」
言わずもがな、生徒会室から響生と絆のやりとりをデバガメしていた架。
あれからずっと、絆に言う機会を窺っていたらしい。
変わらない笑顔が、架のストレート過ぎる物言いを余計に引き立てる。
二人の間の空気がみるみるうちにピリッと締まり、絆の体も気付けば架の正面に戻されていた。