「いやぁ、これで僕も雅さんに怒られなくて済むよー」


自分の目の前で一人胸を撫で下ろす父を、ただ呆然と見つめる。


「それって」


「うん。今までご苦労様~」


架くんと咲奈ちゃんにもよろしく~。



ヘラヘラッと笑いながら付け加えた父が呼ぶのも振り切り、


「あっ! 響生っ」


よろけそうになるのを堪えて駆け上がった響生は、勢い良くベッドへと雪崩れ込んだ。



絆に一方的に気持ちを伝え、一方的に諦めた自分への極めつけは、お役御免の宣告だった。


言い知れない悔しさとやるせなさ。


行き場の無い苛立ちで握り締めた白いシーツがシワを作り、込めた力がそれを更に深くする。




これで本当に、自分たちを繋ぐものは失くなってしまった。



ギュッと瞑った瞳はそれ以上の思考を遮るように、響生を眠りへと誘っていった。