『……もういい』



諦めを口にした瞬間から、どんどん滅入っていく気持ちが熱で鈍った体を更に重くしていた。


諦めてしまえば楽になれる。


そんな予想は大きく外れ、今は体より心が苦しかった。



さっさとベッドに潜り込んでしまおうと、自室に続く階段に足を掛けたところで、


「響生っ」


自分の名前を呼び止めた父に振り返れば、鬱陶しいくらい嬉しそうな笑顔を浮かべている。



無視して階段を上がってしまおうかと思ったものの、


「……何だよ」


そんなことしたら多分、部屋の中まで付いて来かねない。



ということで早めに手を打った息子が、苦渋の表情を浮かべていることすら気付かず、


「いやね。絆ちゃんのことで学校から報告があってさ」


今まさに息子が苛まれてる名前をアッサリと出してしまう。



渋かった表情はますます厳しくなり、目を伏せた響生は深い溜め息を漏らしている。


もちろん、そんなことなんか毛ほども気にしてない父は、


「響生たちのおかげで出席日数が合格圏内に入ったって」


「えっ……」


息子とは打って変わって明るい声と笑顔で、響生に追い討ちをかけた。