そして金曜日。

咲奈が美園沢家にお泊まりに来る日がやってきた。



友達が泊まりに来る。


この初めての体験は、絆を嬉しいような照れくさいような気持ちにしていた。




……一時間前までは。




「ここちゃん、今日は咲奈とお風呂に入ってー背中流しっこしよーねー?」


「ねー? 絆嬢」


「…………」



絆が腕によりを掛けて澪路と雅以外の為に作った手料理の並ぶ食卓で、箸片手にはしゃぐ咲奈の隣で何故か並んで座ってる胡散臭い笑顔。



怪訝な顔でその光景を見つめていた絆がチラッと隣に視線を動かせば、


「…………」


一人黙々と箸を動かし続ける響生が、絆の手料理にがっついていた。



もう、どこからツッコミを入れていけば良いのかもわからない。



「架はダメー。響生と入りな」


「えー。野郎は柔らかくないからヤダよ」



すっかりいつも使っている澪路と色違いの箸を皿に置き、溜め息をついた絆に、


「……おい」


ずっと黙ったままだった隣から声が掛けられ、



「おかわり」



目の前にお茶碗が差し出された。