放課後。

生徒会室のど真ん中を陣取るソファーに座った響生は、さっきから頻りに扉ばかりを見つめていた。


日直と担任の呼び出しで後から行くと、ニタニタ笑いで告げてきた幼なじみたちを待っているワケではない。



響生の待ち人はただ一人。


「……あれ? 響生一人?」


軽いノックの音の後、すぐさま開いた扉から現れたのは絆。

もちろん、言わずもがなで響生の待ち人だ。



ソファーから立ち上がった響生は、架と咲奈を探してキョロキョロする絆に歩み寄り、



「……響生?」



その正面でただ、黙ったまま顔を見つめた。


じっと自分の顔を見つめる響生を訝しそうに上目に窺い、絆は小さく首を傾げる。


「……なぁ」


だんまりのままだった表情が渋いモノに変わり、


「澪路に何言われたんだよ?」


鋭くなった眼差しはレンズ越しに、絆のうっすら赤くなった瞳を捉えていた。


言われた瞬間、赤くなった瞳は見開き、そしてゆっくりと影を落としていく。


「……響生のお家に帰らないでずっと一緒に居てくれるって……今まで通り」