先輩は、足を止めずに徐々に近づいてくる。
「唯の好きな人って誰?」
「それは……」
お兄ちゃんだなんて言えるハズがない……。だってもう死んだ人間なんだもん。
かと言ってどうすれば……
私の傍にまで迫ってきた先輩は、今まで見た事がないような黒い笑みを浮かべている……
「まさかとは思うけど……、お兄ちゃんなんて言わないよな?」
「……っ!!?」
先輩から発せられたお兄ちゃんと言う言葉に、びっくりして返す言葉が見つからなかった。
「へぇ……図星なんだ。人間じゃないのに?」
「なっ、何を言って……」
何でそんな事、先輩が……?
先輩は、お兄ちゃんが悪魔だって知ってるの……?
疑問に思う事はたくさんあったけど、自分からは何も言わない方がいいと判断する。
とりあえず、知らないフリをしてみる事にした。
「何の事か解りません。お兄ちゃんはもう死んだんです。先輩も知ってますよね?」
「嘘は良くないよ?」
「嘘なんてついてません」
「ふーん……。じゃあ君の大切なお兄ちゃん、俺が捕まえようか」
お兄ちゃんを捕まえるって、どういう事……?
驚きと戸惑いを隠せず、つい表情が崩れる。
そんな私を嘲笑うかのように、先輩が喋り出した。
「実は俺の家系は、悪魔を捕まえるハンターなんだよ」
「ハンター……」
いつかイグルスさんが言ってた。悪魔を狩ろうとする人間の存在……
捕まったらお兄ちゃんは……?
「俺から離れるなんて言わないなら、見逃してあげてもいいよ?」
お兄ちゃん……
私はどうすればいい……?
