「じゃあ、唯のお望みのお化け屋敷に入りますか」

「先輩、無理してない?平気?」

「ああ、大丈夫だ。行こう」



唯の手を取り、お化け屋敷に向かう。

学校の事や友達の事を話す唯はとても楽しそうで、そんな笑顔を見ていたら抱き締めたくなった。


そんな自分は抑えられても、それでも繋がれた手の温もりを愛しいと思う気持ちだけは、自然と溢れてくる。




「先輩、今日は尚哉くんは?」

「さぁな。部屋でゴロゴロしてるんじゃないか?」

「……何か兄弟っていいなぁ。私もお姉ちゃんかお兄ちゃんが欲しかった!」

「弟や妹じゃなくて?」

「いざという時にお姉ちゃんやお兄ちゃんの方が、頼れそうじゃないですか?カッコいいお兄ちゃんだったら、言うことナシなのにな!唯を守ってやる……とか……言われ、たり…………」




何かが引っ掛かるのか、唯は口を閉じ黙り込んでしまった。

それからすぐにアトラクションに着き入り口に並ぶが、唯は難しい顔をしたままだ。




「唯、もうすぐ順番になるけど行けるか?」

「あ、はい!行きましょう。先輩こそ腰抜かしたりしないで下さいね!」




どこか不自然な笑みを浮かべた唯が、繋がれた手を引っ張って中に入っていく。



唯の恋人役ももう終わりかな……

そんな予感を胸に、俺も中に足を踏み入れた。