「陵さん、今何て……?」
「あれ……何か体が軽いな」
兄貴の言葉を無視して、体の事に触れた陵。
本人には先ほどの兄貴との……は記憶にないらしい。
いや、それがいいと思うぞ、うん。
「それなら、イグルスさんが緊急でエネルギー補充を行える方法を、教えてくれたからです」
「イグルスが……?」
「ええ。向こうも手がかりはまだないようですが、電話で連絡が取れたので」
さっすが兄貴、口八丁だな……。
まぁこの口の悪さ、じゃなくって巧みな言葉使いで、生徒会の予算なんかも思うがままってんだから怖ぇ。
「って唯の事!!陵、近くに唯が居るってどういう事だ?何か感じるのか?」
「ああ。エネルギーがあるないで、こんなにも気を感じる能力に性能の差が出るなんて、思ってもみなかったぜ。イグルスに感謝しなきゃな」
…………。
まぁいいや。
でも、近くに唯がいるとなればこっちのも……の?
唯って確か誘拐されてんだよな?
誘拐って事は、それを実行する犯人がいるって事で……
「近くに誘拐犯もいるって事か!?」
「……だろうな」
「どうすんだよ?」
「今、何時だ?」
俺は、携帯を開いて時間を確認した。画面にはでっかく『21:05』の表示。
まだまだ時間はある。
唯が近くに居るなら、様子を把握して助ける計画を立てて……
うん、間に合うはずだ!
