お兄ちゃんは悪魔サマ




兄貴のその行動から予測できる事はただ1つ。


いや、普通に見たくねぇ……

そう思って目を瞑ろうと試みるが、何故か視線がそこに囚われたままだ。
怖いもの見たさってヤツなのか!?



これだってれっきとした人(悪魔)助けで、相手が溺れた人間であればマウスツウマウスだと割り切って、こんな妙な気分で見る事はなかったのかもしれない。


いや、陵も消えかけてんだけど……
でもさ、男としてこの光景はちょっとオエッて思ってもいいかな?



結局目が離せないまま見守った俺の前で、兄貴がゆっくり立ち上がった。




「どどど、どう?」

「……動揺するな」

「いや、こんな光景見せられといて冷静でいろって方が無理だろ!!」



兄貴はしれっと、何事もなかったような表情をしている。

男気があると言っていいのか、ただの無鉄砲なのかは解らねぇけど……




「少し呼吸が落ち着いたみたいだから、どうにかなるだろう。それより今は唯の事を考えないと」

「……でも、何の手がかりもないのに捜せるのか?」

「捜すんだ。何としても」



そんなやり取りをしていた時だった。

陵がホンの少し、動いた……










「唯は……近くに居る」