何かが出てくる可能性もある……
俺は少し距離を取って警戒しながら、ゆっくり開かれていくのを見守っていた。
「何も出て来ませんね」
「ああ……」
開かれたドアの向こうはただ黒い。いや、真っ暗闇と言った方がしっくりくる。
だが、不思議と怖さは感じなかった。
嫌なオーラを放つ大元のでかい扉とは相反して、このドアから感じられる気には敵意がない……とでも言うか。
「行くぞ」
「えっ!?もう少し考えなくてもいいんですか?」
「いい。多分、大丈夫だ」
この先に真実がある――……
何故そんな風に思ったのかは解らない。
漠然とそう思っただけ、としか言い様がない。
そしてその闇に身を投じて、距離感さえ掴めないままある程度の時間が経ったと思われる時だった。
『陵……!?何故あなたが魔界に居るのですか?』
不意に頭の中に響いた声がイグルスのものだと認識するまでに、若干の時間を要した。
でもこうやって連絡が取れると言う事は、近くに居るって事だ。
運任せで進んで来たにしては上出来だ……と思っていた。
だが、所詮【契約】に縛られた悪魔……
全てがアイツの思惑によって導かれていたなんて、この時の俺は考えさえもしなかった。
単純に、イグルスと連絡が取れた事に安堵していたんだ……
