「もう少し近くに寄ってみましょうよ!」
「お前さ、何にも感じねぇの?この嫌〜なオーラ……」
「そうですか……?でも虎穴に入らずんば虎児を得ず!!ですよ」
んなの、言われなくても解ってるっつの……
俺は少し躊躇いながらも、扉との距離を詰めていく。
扉は真っ黒な色で、何やら文字のようなものが赤で書かれている。それこそびっしりと……
不気味な事、この上ない。
この扉の周りだけ靄がないのも、更に不気味さを助長するかのように演出している。
とりあえず上下左右に移動しながら、何か突破口はないものかと探してみるが特には見当たらない。
参ったな……
「あの〜、扉開きそうですよ」
「は……!?」
考え込み、下を向いていた顔を慌てて上げる。
だが目の前の扉は動いている気配はない……
「動いてねぇじゃん」
「違いますよ!あそこです!!」
そう言って紗香が指差した方を、改めて見てみる。
遠目でははっきりとしないが、何かあるのは解った。
慎重に近寄ると、でっかい扉の一部に、縦3メートル、横2メートル位の普通より少し大きめのドアが存在していた。
それは紗香の言う通り、開こうとしていた……
