「ねぇお兄ちゃん、イグルスさんともまた話したいんだけど……」
イグルスさんと話したからといって、私たちが向かっている運命に抗う事が出来るかどうかなんて解らなかった。
それでもいつ来るか解らないその時を、ただ待つよりは……
「イグルスに?」
「うん。イグルスさんって何百年って生きてるんでしょ?だったら、きっといろんな悪魔を見てきたんじゃないかって……」
「唯がそうしたいなら俺は止めない。けど、変な期待は持つなよ」
きっとお兄ちゃんはもう聞いてみたんだね……
それでも自分の運命だから、後悔だけはしたくない。
「それでもいい。私はお兄ちゃんがいなくなるなんて嫌だからね!!」
「俺だって唯を絶対守るからな」
一瞬顔を見合せて、私たちは少しだけ笑った。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「キスしてもいい?」
「……それ俺のセリフな」
そう言ってお兄ちゃんはそっと私に近付いて、触れるだけのキスをした。
その時が来るのは怖い……
でも、私の中で少しだけ覚悟が出来た気がした。
