「イグルスさんが現れた時、そのルカさんは何も言わなかったの?」
「悪魔がスカウトできるのは、その本人が死んだ時だけだ。つまり必ずそこには天使もいるって事。天使も担当する区域は同じだから顔馴染みだったんだろ」
イメージ的には天使と悪魔って言うと敵対してる感じなんだけど、話を聞く限りだと少し違うのかな……?
「お兄ちゃんは悪魔になる事に躊躇いはなかったの……?」
「そんなもんなかったよ。ろくでもないと思ってた俺に、大切なものを守るチャンスが与えられたんだからな」
そう言い切ったお兄ちゃんの顔が、少し頼もしく見えた。
「お兄ちゃんが悪魔の契約をした時に決めた目的は、私を助ける事……?」
「…………ああ」
結局のところ、お兄ちゃんの話を聞いても何の解決にもなりそうになかった。
お兄ちゃんは私を助けたい。
私はお兄ちゃんを助けたい。
でもそれらは相反する願いであって、どちらともが助かる為にはどうすればいいのかなんて、全く予想もつかなかった……
