「あの事故にあった時……やっぱり自分じゃすぐに死んだなんて理解出来なかった」
お兄ちゃんはその時の事を思い出すかのように、目を伏せた。
「茫然と見ていた。自分が倒れている姿を……。するとすぐに俺の側に来たヤツがいた」
「イグルスさん……?」
お兄ちゃんは首を横に振って、話しを続ける。
「ルカと名乗る女の人だった。その子は自分を天使と言ったよ」
「天使……お兄ちゃんのお迎えに来たって事?」
「ああ。そこで言われたんだよ」
【あなたはこの事故で命を落としました。今から魂をあの世に連れていきます。…その前に1つだけ、あなたが知りたい事を教えて差し上げる事が出来ます】
「ってな。最初は冗談かと思ったさ。でもそこに転がる自分が病院に運ばれて、顔には白い布が被されて……。しばらくしてお袋と唯が来て、その体の側で泣き崩れた」
私はその時の事を思い出してしまって、目の奥に熱いものが込み上げて来た……
「ああ、自分は死んだんだってやっと納得したよ……」
まるで、ドラマの話しを聞いているかのような錯覚に捕らわれた。
「俺が1つだけ聞けると言われて、聞いた事は――……」
