その日の夜遅くにお兄ちゃんは帰って来た。
「どこに行ってたの……?」
「……いろいろ考えてた。自分の事も、唯の事も、イグルスの事も……」
「やっぱりちゃんと教えてはくれないの……?」
お兄ちゃんは昼間とは違って、困ったような苦笑いを浮かべる。
「俺が言わなきゃ、アイツんとこに聞きにいくつもりなんだろ…?」
「…………うん」
「話せる範囲でなら話す。条件はこれ以上、アイツに近付かない事。解ったな?」
「内容が納得できたら、その条件は守る」
「納得出来なかったら聞きに行くのか……?」
お兄ちゃんの顔と声が険しくなる。でも、ここは私も譲れない――
私はお兄ちゃんをジッと見つめる
「はぁ……まぁいい。そんなに複雑な話じゃない。至って単純な事だ」
そう言ってお兄ちゃんは話始めた。自分が死んでからイグルスさんと出会い、悪魔の契約に至る迄を……
