あの後、イグルスさんに少しだけ過去を聞いてみた。
「私は、大切な人を助けてあげる事が出来ませんでした……。何がなんでも、この手で守ると決めたのに……」
どんどん哀しみの色が濃くなる瞳に、私はそれ以上聞く事が出来なかった……
「イグルスさん。悪魔になった人はみんな誰かを助ける為に契約するんですか?」
「いいえ。中には生前の復讐をする為に悪魔になる輩もいます。それはスカウトする悪魔次第です。共通する事は、深い想い……ですね」
「深い想い……」
お兄ちゃんもそこまで私を想ってくれてるって事だよね……?
でも、私だって……
「八城先生にもそんな想いがあったのかな……」
私が八城先生の名前を出すと、イグルスさんの表情が変わった。
「唯さん。八城とは関わらない方がいい。今日、直接会ったにも関わらず私には彼が何も見えなかった」
「見えない……?」
「私くらい長い間悪魔をやっていると、相手と直接対峙した時に断片的に何かしら情報を感じとる事が出来るんです。それなのに、八城からは何も感じられなかった」
どういう事?
先生は普通の悪魔とは違うって事なのかな……
