「奈々さんは、ずっと寂しかったんだと思う。側に居て欲しい時に、一番居て欲しい人に居てもらえない寂しさ。…私もわかりますから…その気持ち。」



思い出すようにそう言った沖田に、俺は何も言えなかった。


ふと、頭に浮かんだのは…あの放課後、教室での沖田の泣き顔…。。


あの泣き顔と関係あるんだろうか…。



「バカだろ、俺。女1人も大事にできないなんてな。」


「違いますよ先生。先生は悪くない。奈々さんも、親友の人も。…ただ、うまく歯が合わなかっただけですよ。」


「いや、仕事を理由に…奈々との関係を壊していったのは俺自身だ。結局は、俺の要領の無さが原因だ。」



そうだ。寂しい思いをさせて奈々を他の男へと向かわせてしまったのは、俺なんだ。



浮気されたと、被害者ぶってた俺。


奈々や省吾を恨む資格なんて、俺にはこれっぽっちもなかったんだ………



「先生、まだ恋愛なんて数えるほどしかしてない私から言っても説得力ないんですけど…」



黙り込んだ俺を、チラッとみた沖田は俺にこう言った。



「過去は過去…大事なのは、今の先生の気持ちなんじゃないですか?」


「今の…俺の気持ち…」



はっとして口に出した言葉…


沖田が俺に気づかせた、大事なこと…