呆然と立ち尽くす美咲をおいて、俺はそのまま店をでた。
あんなに綺麗だとは思わなかった。
やっぱり会うんじゃなかった。
あんな綺麗なのに、平均的な俺が隣を歩いていいわけない。
『平均的な翔くんと特上の先輩。
選ぶなら特上の先輩でしょ?』
あの言葉が頭の中で繰り返される。
「♪♪♪〜」
メールを確認すると美咲からだった。
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from:美咲
subject:
main:暇つぶし。付き合ってくれるんじゃなかったの?
うそつき
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うそつきか。
美咲を傷つけた。
でも、平均的な俺と歩きたくないだろ?
歩きたくない?
そんなこと美咲は一言でも言っただろうか。
外見なんて気にしない。
彼女は確かにそういってた。
じゃあ誰が言った?
『臆病者』
俺だ。
一緒に並んで歩くと俺が惨めな気がして、美咲みたいに顔よくないし、周りにバカにされると思った。
『プライドが高すぎんだよ、お前は』
こんな俺なのにプライドだけは一人前に高くて、自分が傷つきたくないから美咲から逃げた。
美咲は寂しいから俺と会うって言ってたのに。
友達に彼氏が出来て寂しいから俺とメールしたのに。
俺まで美咲を置いてきてしまった。
「っ翔!!!!」
少し高い声。息を切らして。
走ってきたんだろう。
こんな細いヒールで一生懸命追いかけてきたんだろう。
肩で息をする、彼女が無性に愛おしく感じる。